渡邉哲也
渡邉哲也 わたなべ てつや
昭和44年(1969)愛知県豊田市生まれ
日本大学法学部経営法学科卒業
2009年『本当にヤバイ!欧州経済』(彩図社)を出版、欧州危機を警告しベストセラーになる。内外の経済・政治情勢のリサーチや分析に定評がある。
最新刊は『2019年 アメリカはどこまで中国を崩壊させるか そして日本が歩む繁栄の道』2018年11月徳間書店より出版
中国バブル問題
現在、世界中が大きく変動しております。米中の問題 そして朝鮮半島問題 など 様々な問題を抱えて 世界経済は動いているんですね。さらにヨーロッパを見てもブレグジット、ドイツ銀行危機 またイタリアやスペインなどで 各国が 反 EU の立場を取り始めた。
独自体制を貫きたいと言い始めてるという中で、世界の構造は大きく変わりつつある。そして現在最大のリスクとなっている、経済にとってはやはり 中国経済 中国バブル問題 ということになるんだと思います。
中国バブルは崩壊してないのか?崩壊したのか?様々な話が出てくるわけですが、中国の場合 計画経済 の基本があるもんですから、その実態がなかなか表に見えてこないと…それが最大の問題でもあり 逆に言うと中国政府すら その実態を把握できていないのではないか と言われているのが現状なんです。
中国の実体経済悪化の裏付け
ここに来て、米中貿易戦争によって 中国の実体経済が 一気に悪化したという話が出てまいりました。これは日本にも関わってくる大きな問題なんです。今現在日本の輸出企業というのは B 2 C という消費者向けのビジネスは行ってません。
日本の輸出企業というのは ほとんどは B 2 B business to business 企業向けに基幹商品や製造機械とか キーパーツと言われる、日本でしか作れないような高純度なものを輸出している。
そして B 2 G business to government。 今ある鉄道やインフラ輸出のような形の、政府向けの輸出が中心となってきてるわけです。その上で中国を見る最大のポイントとなるのが、日本から中国に対しての輸出額ということになります。
つい先日 貿易統計が発表されたんですが 1月の貿易統計が非常に厳しい結果になっております。
主要産品が軒並み2桁。それも20%台の減少ということで、特に 紙類 紙製品に関しては40%。一般機械に関しても25~26% というような状況で非常に厳しい。
半導体製造装置に関して 24.8% 。金属加工機械等に関して 52.2% と半分まで落ち込んでいる。これは何を意味するかと言えば 中国国内での設備投資が全く進んでいない、または止まっている。また、設備の更新も止まっているのではないかという予測が立つわけです。
中国政府 裏目裏目の策
現在、中国の状況はどうなってるかと言いますと、まず不動産バブルの状況で言えば、すでに深圳(シンセン)の不動産価格は年収の28倍。北京や上海などでは年収の20倍から22倍 ということで到底ローンを払えない状況まで不動産価格が上昇してしまっている。
当然、日本より著しく高い状況なわけです。所得が少ないのに不動産価格だけが上がり続けていた、逆に言うと これが中国経済を支えていたのが原動力だったわけです。
2015年8月 中国の株式バブルが崩壊しました。この際に、いわゆる一般人の資金が 今まで株式市場に入っていたお金が 再び不動産市場に戻って行った。
本来は不動産市場に戻って行っても、行くのを止めて とりあえず一定の規模である程度バブルを崩壊させて そして、もう一度経済を再構築させるのが良いわけですが、それを中国政府はせずに 不動産価格の上昇で経済を改善させようとした。
その結果 不動産価格だけがどんどん上がっていく。逆に言うと、その不動産の値上がり益が消費を支えたという構図になっていた訳です。
実体経済に関しては中国の余剰生産、物の作り過ぎ等で 鉄鋼はダメ、船もダメ というような状況で、最先端の技術いわゆる半導体や携帯電話など最先端技術を蓄積しようと 中国製造2025というのを発表し そこに政府系資金を大量に投入して 経済の改善をしようとしてきたわけですが、これが逆にいうと仇になるという形で、アメリカ当局から目をつけられてしまった。
アメリカ版 兵糧攻め
アメリカは、中国が内製化…今まで輸入に頼っていたもの を国内で生産して そしてさらにステップアップして 工業大国になろうとしていたものを止めてしまったんです。
中国は物は作れる。世界の工場であることは間違いがないところですが 中国の最大の欠点は、物を作る機械が作れない。
物を作るための基礎原料が国内で調達できないことなんですね。中国製造2025でも 携帯電話や半導体 というものをメインにおいて 今後中国が拡大させていく産業、2大産業ということで内製化を進めようとしていたわけですが、 実は中国 確かに半導体を作ることはできるんです。そして携帯電話を作ることができるんです。
ただし、半導体を作る機械や携帯電話を作る機械、また半導体の原料になるシリコンウェーハや特殊な研削機 これを中国は内製化できないんです。
また、いわゆる知的財産権 という問題が米中貿易戦争でも大きな問題になっていますけれども、このような半導体を作る機械とか研削をする機械というのは 完全に知的財産権で守られている状況なもんですから 中国としても それを盗んできて作るというのも なかなか難しい。
特にアメリカ側は そのような産業スパイを防ぐために 今 躍起になっている状況でもあるということなんです。
そのような状況の中で 半導体携帯電話 この2大産業にストップがかかってしまった。
また一帯一路に関してもいわゆるベネズエラがその典型なんですけれども無理貸しをした結果 払えない国ベネズエラやパキスタンなど 払えない国が様々出てきて、またこのままでは国が破綻するということで 一帯一路を辞める国 マレーシアなどがその典型になるんですけれども、辞める国もどんどん出てきてしまった。
その結果ですね 国内において鉄鋼などが 余剰に余った状況がずっと続いている この状況ではですね 国の経済が良くなる訳がないわけです。
相次ぐデフォルト
そのような状況の中で 中国企業のデフォルト、大型破綻というのも目立って来ました。
去年は 2月から5月あたりの期間に、 安邦という中国の大手保険会社と海航集団 という、いわゆるファンドですね 海南航空を中心とした様々な産業に投資する 投資ファンドが破綻しました。実質国有化されて存続はしているんですが実質破綻したわけです。
そしてこの次の段階としてまた他のファンド、今年に入って1月と2月の間に大型ファンドが2件破綻しています。
中民投と言われるもので CMIG 中国民政投資集団というところで 、これは中国政府が音頭を取って 中国のいわゆる民間企業59社がお金を出し合って作った投資ファンド。この投資ファンドは国内外の様々な案件、これから有力であるだろうと思われる案件や産業に投資して 中国の経済を支えようとしていたわけです。
そのファンド、民間企業59社が デフォルトいわゆる短期の債権が支払えなくなって債務不履行を起こしてしまった。
ここのファンドだけでも設立当初 約1兆円の資金を投じたわけですが 現在5兆1205億円の資産があり、それに対して負債総額が 3兆8210億円ということで ほぼイコールフッティング。
ただし この多くが完全な塩漬け状態になっており、これを換金して負債を払おうと思うと 逆に言うと投げ売りしなきゃいけなくなるわけです。
資産を投げ売りすれば当然 それに応じて 資産額いわゆる手に入る現金が 一気に減少してしまう。そうなってくると 支払いができない 破綻してしまうという状況に陥ってるわけです。
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