習近平の不気味な実力とは?中国5000年の戦略パターンから読み解く

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中国という国の「異常な粘り強さ」を理解する

中国とアメリカの関係、そして習近平体制14年間をどう評価するか。この問いを考えるうえで欠かせないのが、中国という国が世界史の中で繰り返してきた独特のパターンである。中国人の国際政治観は、日本人のそれとはまったく異なる。この違いを理解しないと、中国が何を目指し、何をしているのかを正しく把握できない。

結論から言えば、習近平という人物は「悪人」であり「非常に冷たい」性格の持ち主だが、日本にとって都合の悪いことに「有能」である。国力・経済力・技術力・軍事力という観点だけで見れば、この14年間で中国を確実に強くした指導者だと言わざるを得ない。

春秋戦国時代に培われた中国の戦略思考

紀元前770年から紀元前221年まで続いた春秋戦国時代、約550年間は、中国人の戦略観にとって今なお最も重要な時代である。孔子・孟子・老子・荀子といった思想家たちがこの時代に輩出し、哲学や政治思想、倫理学を高いレベルで議論した。孫子の兵法もこの時代に生まれている。アメリカの国際政治学者は、この時期の中国人同士の外交・戦争論議を、古代ギリシャのトゥキュディデスが記した『ペロポネソス戦争史』に匹敵する知的水準にあると評価している。

これに対し日本は、モンゴル襲来の一時期を除けば占領された経験がなく、明治維新まで本格的な外交論争や戦略論を交わさずに生きてこられた稀有な国民である。国際政治において日本人は「内弁慶」的、良く言えば平和的だが、悪く言えば子供っぽく騙されやすい面があるとも言える。

中国は歴史上5回、大帝国を築いてきた

中国は秦・漢・唐・明・清と、歴史上5回にわたって大帝国を建設してきた。最短で約60年、長いものでは180年をかけて勢力圏を最大化してきた実績がある。1985年に鄧小平が「2049年までに世界一の超大国になる」と語り始めたのも、こうした歴史的経験に裏打ちされたものであり、中国人にとって数十年単位の壮大な国家目標を掲げ、それに向かって国民が協力するのはごく自然な発想なのである。

中国が5回書き換えてきたグランドストラテジー

過去50〜60年の間に、中国は国家の大戦略(グランドストラテジー)を5回にわたり大きく転換してきた。

1969年、ソ連との国境紛争で核による威嚇を受けた毛沢東は、ソ連に対抗するためアメリカに接近し、ニクソン・キッシンジャーを引き込んで軍事技術や情報を引き出した。1979年には鄧小平が改革開放政策を決定し、アメリカから経済・技術支援も得る方向へ転換。1991年の湾岸戦争とソ連崩壊を受け、鄧小平は「経済面では対米協調、軍事面では対米拒否能力(アンチ・アクセス/エリア・ディナイアル)を蓄える」という二正面戦略を打ち出した。2008年のリーマンショックを機に、江沢民・胡錦濤体制はアジアにおける覇権国家を目指す方針に転じ、2016年前後からは習近平体制のもと、アメリカを押しのけて世界一の大国になるという、より攻撃的な戦略へと移行している。

この5回の戦略転換は、いずれも結果として成功していると見るべきであり、その国家戦略構想力の高さは、好悪の感情とは別に正当に評価すべきものである。

グランドストラテジーなき日本という対照

一方の日本は、81年前の敗戦以降、独自のグランドストラテジーを持たず、アメリカに軍事・外交政策の決定をほぼ委ねる「属国主義」を続けてきた。これは保守派・革新派を問わず共通する構造的な問題である。左派メディアは「平和憲法を守っていれば大丈夫」、親米保守派は「アメリカの言う通りにしていれば大丈夫」、国粋的な右派は「日本は世界一素晴らしい国だから中国など恐れるに足らない」と、それぞれ根拠なき楽観論に立脚しており、いずれも国際政治学・核戦略理論・マクロ経済学といった基礎的な学問の裏付けを欠いている。

アメリカの憲法上、開戦の最終決定権は議会にある。世論調査では、米国民の過半数が東アジアで中国との戦争に巻き込まれることに否定的であり、「中国が世界一になるならアメリカはナンバー2でよい」という声も広がっている。国務省・国防総省・CIA関係者と直接議論すると、彼らは「核戦争のリスクを冒してまで日本を守るつもりはない」とはっきり口にする。日米安保条約は、アメリカが同盟国を守る「絶対的な保証」ではなく、あくまでアメリカの国益に沿う限りで機能する取り決めにすぎない。

習近平という人物 ― 壮絶な少年期

習近平の父・習仲勲は中国共産党の大幹部だったが、1960年代にソ連との交渉役を務めるなかでフルシチョフのスターリン批判に共感し、これが毛沢東の逆鱗に触れて「修正主義者」の烙印を押される。習近平が9歳のとき、父は投獄・拷問され、一家は「反逆者の家族」として徹底的に迫害された。母は人前で殴打され、姉は迫害に耐えかねて自殺したとされる。習近平自身も9歳から25歳まで、収容所暮らしや農村への下放を含む16年間、過酷な人生を強いられた。

それにもかかわらず、習近平は共産党への入党を8回申請し、9回目にしてようやく認められたという。父を、家族を苦しめた党そのものに執着し続けたこの経緯は、多くの研究者にとって理解しがたい謎とされている。この体験を通じて、彼は人を信用せず、本心を決して見せない、極度に秘密主義的な人格を形成したと見られる。

プロイセンのフリードリヒ大王との類似性

習近平の統治スタイルは、18世紀プロイセンのフリードリヒ大王を思わせる。父親から過酷な仕打ちを受けて育ったフリードリヒ大王もまた、冷酷な軍国主義者として弱小国だったプロイセンを軍事強国へと育て上げた。習近平も、目的への執念と実行力、そして人間的な冷酷さという点でこれと重なる。人民解放軍の最高幹部を次々と粛清し、忠誠心と能力を兼ね備えた軍を作り上げようとする姿勢は、この執念の表れである。

数字が示す中国の実力

不動産バブル崩壊で国民生活が苦しむ一方、習近平は軍事費・研究開発費・戦略産業への補助金は一切惜しまない。中国の貿易黒字は年間1兆ドルを超え、この資金力を背景に軍事・産業投資を続けている。購買力平価で見た経済規模はすでにアメリカを2〜3割上回っており、名目軍事費はアメリカの半分程度とされるが、実際の兵器・弾薬の生産能力はアメリカを3〜5割上回るとペンタゴンも認めている。米国防総省内部の図上演習では、中国との軍事衝突の約7割で中国側が優位に立つとの分析もある。核弾頭数では依然アメリカが優位だが、中国も着実に増強を続けている。

日本はどう対応すべきか

まず必要なのは、過去81年間、日本の外務省・防衛省・自民党・野党を問わず、対米依存に安住してきたことへの率直な反省である。日米同盟を維持すること自体は不可欠だが、それだけに依存する体制からの脱却が求められる。

現代の戦争の主役はミサイルとドローンであり、イランやウクライナの事例が示すように、伝統的な陸海空戦力だけでは対応できない。日本も自衛隊を抜本的に改革し、ミサイル・ドローン部隊と核抑止力部隊を新設すべきである。戦術核弾頭は小型で必要量が少なく、コストパフォーマンスに優れた抑止力となりうる。あわせて、国際関係論・安全保障理論・核戦略・外交史を体系的に学んだ人材を計画的に育成する仕組みも必要だろう。中国がこれほどの執念で国家戦略を練り上げてきた以上、日本もまた本気で自国のグランドストラテジーを構築し直す時期に来ている。

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