はじめに
文藝春秋YouTubeチャンネルで公開されたイスラム思想研究者・飯山陽氏のインタビューが、日本保守党の運営問題を再び浮き彫りにしました。党幹部の百田尚樹氏、有本香氏、そして議員陣の言動をめぐり、寄付金の不透明さや過激発言など、多くの疑惑が噴出しています。なぜ飯山氏は告発活動を開始し、いまなお続けているのでしょうか。本記事では、日本保守党が抱える問題とその影響を、YouTubeで語られた内容に基づいて整理します。
日本保守党の背景
日本保守党は2023年10月、作家の百田尚樹氏らが中心となり「真正保守」を掲げる新党として結党されました。いわゆる保守層の新しい受け皿として注目を集め、短期間で多くの党員を獲得しました。しかし党としての組織基盤やガバナンス整備がままならず、外部からの疑問が相次いでいます。
日本保守党への批判
飯山氏が指摘した主な問題点は以下の通りです:
- 運営の不透明性:寄付金の領収書未発行やガバナンスの欠如。
- 反論の欠如:飯山氏の告発に対し、百田氏や有本氏からの具体的な反証が一度もない。
飯山陽氏が日本保守党に関わった経緯
飯山氏は当初、研究者としてイスラム思想を研究・発信していた人物です。政治への直接的な関心は薄く、学者としての活動を主に行っていました。ところが、日本保守党事務総長の有本氏から「東京15区補選に出馬してほしい」と請われ、一度は立候補を承諾します。 当時は「保守党としての理念が日本を良くするかもしれない」という期待を抱いていましたが、運営の実態や党幹部の言動に触れるうちに、数々の不審点を目の当たりにしたといいます。
選挙活動中に見えた問題
東京15区補選で飯山氏は以下のような不安や不信感を募らせました。 まず、警備の要請に応えてもらえず、つばさの党による実質的な妨害を一人で受けざるを得なかったこと。さらに供託金を「党が負担すると言いつつ、後から大金を出せと言われた」といい、説明も不十分だったため戸惑いが大きかったようです。また、百田氏が選挙カーで公職選挙法に触れかねない言動や歌唱を続け、注意しても聞き入れてもらえなかったとも語っています。
寄付金処理とガバナンスの不透明さ
飯山氏が告発する最大の論点の一つが「寄付金や領収書の問題」です。党に寄付した人から「確定申告で税控除を受けたいが必要書類を出してもらえない」と相談を受けたことをきっかけに、党への疑問がさらに深まったといいます。有本氏は「発行する」と言いながら実行されず、党の連絡窓口も不明瞭で問い合わせに応じないまま。こうしたガバナンスの欠如に加え、百田・有本の2人が日本保守党をテーマにしたYouTube配信で得た収益を個人のものとし、党の活動資金として還元していないとの指摘も行っています。
過激発言への危惧
飯山氏によれば、百田氏の女性蔑視や反中・反韓的な発言は看過できないほど過激で、「議席を増やし権力を強めれば本当に危険な法案が通るかもしれない」との懸念を示しています。実際に「女は25歳までしか結婚できないようにすればいい」「30過ぎたら子宮を摘出しろ」といった暴論を“ネタ”としてしばしば口にする百田氏。飯山氏はこうした発言の数々を「SFでは済まされず、リーダーとして極めて不適切」と非難し続けています。
つばさの党とのトラブル
選挙期間中に突如現れた右翼系の団体「つばさの党」が日本保守党の選挙カーを執拗に煽り運転をし、罵声を浴びせるなどの行為に及んだのも衝撃的でした。飯山氏としては党幹部の対応を期待しましたが、百田氏からは「相手をして話を聞いてやれ」という指示があっただけで実質的なサポートは無かったようです。こうしたトラブルに党がほとんど関与しない姿勢を目の当たりにして、飯山氏は「党の実態」に強い失望を抱いたといいます。
告発がもたらした反響
YouTubeでの告発後、飯山陽氏を支持して入党していた多くの党員が「騙された」「真相を知って離党した」と表明する一方、百田氏や有本氏を支持する層による飯山氏への誹謗中傷はX(旧Twitter)を中心に続いているようです。こうした動きは日本保守党に少なからぬ打撃を与えてはいるものの、保守系言論人や著名ジャーナリストの多くは沈黙を保ち、飯山氏の主張を表立って支援する声はまだ多くありません。
飯山氏が政治の道を退いた理由
補選終了後、飯山氏は「政治家になりたいと思ったことはない」と何度も明言しています。研究者として真理の追究をライフワークとしている彼女にとって、権力闘争やプロパガンダの世界は本質的に馴染まないものでした。「国政や地方政治に携わる意思はない」という発言も、党からのいわば“強引なスカウト”だったからこそ起きたトラブルといえるでしょう。
今後の見通し
日本保守党は3人の国会議員を有し、今後さらに国政での勢力拡大を目指すとしています。飯山氏は「少しでも多くの人に党の不透明さや幹部の過激発言を知ってほしい」と継続してYouTubeなどで発信中です。告発がいつ終わるのか、具体的な目標は定めていませんが、「少なくとも素朴な保守層が誤解をしたまま支持することがないように」という責任感が原動力になっているようです。
結論
飯山氏の指摘は、日本保守党の名ばかりな“保守”イメージに疑問を投げかけ、寄付金などの運営・会計処理の実態を浮かび上がらせました。身近な保守層が党名やスローガンに惑わされるのではなく、あくまで事実に基づき政党を見極めることが重要だと強く訴えています。今回の告発騒動をめぐる動向はまだ続いており、今後も日本保守党の対応や言動が大きな注目を集めるのは間違いないでしょう。
読者へのメッセージ
政治活動には常に資金の問題や言論の透明性がつきまといます。支援や投票を行う前に、候補者や政党の理念・運営がどれほど透明で責任を伴っているのかを見極める必要があります。選挙のたびに乱立する新党が本当に国益に資するかどうか――飯山氏の告発は、その見極めの大切さを改めて問いかけているのです。
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