織田邦男 織田くにお
昭和27年(1952)愛媛県出身
昭和49年 防衛大学校(18期)卒業、同年航空自衛隊に入隊。
F-4戦闘機パイロットなどを経て、昭和58年 アメリカ空軍大学へ留学
平成2年 第301飛行隊長
平成11年 第6航空団司令兼小松基地司令
平成17年 空将
平成18年 航空開発実験集団司令官
平成18年 航空支援集団司令官(イラク派遣航空部指揮官)
平成21年3月 航空支援集団司令官を最後に航空自衛隊を退官 最終階級は空将(中将)
退官後、三菱重工業株式会社顧問、東洋学園大学客員教授を務める
平成30年 国家戦略研究所(INS)所長に就任
昨今、日本を取り巻く安全保障の環境が劇的に変化しつつあります。そこで織田元空将が軍事のプロとしての視線で、近い将来日本に起こりうる戦争や紛争の可能性と、もし日本で戦争が起こったとしたら その最悪の状況について シュミレーションした上でそれを防ぐ手立てを全3回の記事で解説していきます。
「近い将来、日本に起こりうる戦争や紛争」の概要
① 中国が尖閣諸島魚釣島を占拠 ←この記事
② 北朝鮮が暴走し、ミサイルで原発を攻撃 ←この記事
③ 南北朝鮮が統一し、対馬を占拠
④ 沖縄が独立し、ハイブリット戦争へ突入
危機を煽っている訳ではない
全般的な話として、こういう最悪の状況の シュミレーションとかの話すると、すぐ日本人は「また危機を煽って」と こういう風になるんですけどね、それは大きな間違いであって危機管理というのは考えたくないことを考える。あるいは最悪を想定するということなんです。
私は2回 アメリカに留学させてもらったのですが、日本人と アメリカ人の思考様式が全然違うのは、日本人は言霊の世界なんですね。不吉なことを言うな! そういうことを言うと縁起でもないと いうことなんですね。
西洋社会と違うのは、昔から言葉には魂が宿る。そして悪い事を言えば悪いものがやってくる こういう深層心理が日本人にはある。昔はそうでした、ところが今は言霊の精神はないと思われていますが今もあるんですよ。
それに対して西洋社会は最悪を考える。
そして、それに対して手立てを打つが故に最悪は起こらないということなんですね。 それが安全保障なんです。
そういう意味でよく アメリカ人が日本人を バカにするのは オストリッチ・ファッションだと言うんです。
オストリッチってダチョウのことなんですよ。ダチョウは自分に危機が迫ってくると穴に首を突っ込んで見ないことによって心の安定を保つ「虚妄の平和」なんです。
なんか、危機が見えると あるいは起ころうとすると穴に首を突っ込む。
それだと本当に危機が起こった時に パニックになって国家の体を成さなくなる。だからこそ危機管理の ノウハウとして「まさか」というふうに考えるんじゃなくて「もしかしたら」 と考えなきゃならない。
そういう意味で危機を煽ってるのではないですよ ということをお話しして、それぞれについて解説していきます。
『空母いぶき』が現実に 中国が尖閣諸島を占拠し自衛隊が奪還作戦
あらすじ
20XX年10月、嵐の中で遭難者に擬装したと思われる工作員が、尖閣諸島の南小島に上陸し、「この島は中国固有の領土であり、中国本土の船舶を待つ」と主張する「尖閣諸島中国人上陸事件」が発生。さらに日本の領海に侵入を図る中国海警局の船舶と海上保安庁巡視船との衝突、調査目的で派遣された護衛艦への威嚇射撃と事態がエスカレートし、日本政府はなかば中国に屈する形で事態の収拾を図るが、中国の行動に危機感を覚えた首相は、同時に新型護衛艦の就役と、その艦船を旗艦にした新護衛隊群の創設を柱とする「ペガソス計画」の前倒しを決定する。
私は作戦を立案する側…作戦部長をやってましたから それから見ますと結構難しいですよ。
占拠するというとまず考えなきゃいけないのは、兵隊を10人上陸させたら1日30食を考えなければいけない。飯食わさなきゃいけない。
こういうこと全く考えないで言う人がいるんですけど、自分が作戦を考えようとしたらまず ロジスティクス。
で、だいたい素人は「作戦を考え」玄人は「ロジスティックを考える」というのはパターンなんですね。
そうしますと占拠しようとしたら、じゃあ10人。10人だったら毎日30食だよな、補給をどうするか?ということを考える。
これが結構難しい。そうすると海上交通路、制海権制空権を取らなきゃならない。それを邪魔されたら ガダルカナル(※注)になっちゃうんですよ。
ガダルカナルにならないようにするためには制空権制海権を取らなきゃ。海上自衛隊が尖閣諸島周辺の海域を封鎖しようとしたら交戦状態になっちゃうでしょ?
交戦状態になったら日米安保条約5条の適用で アメリカが出てくる。中国は アメリカと事を構えたくないと言っているから、尖閣諸島を占拠しようとしたら非常に難しい。
だから謀略戦でくるんですよ。
これは後ほど言いますけど「中国が尖閣諸島を占拠する」シナリオについては私は ほぼありえないと考えます。
中国は戦ったことがないから、戦わずして日本を獲りたい。なぜなら中国は1回負けたら共産党政権が倒れますから。
中国は孫氏の兵法の国で、孫氏は何を言ってるかと言うと
- 兵力が2倍あったら相手を撹乱して分断させろ
- 5倍あったら戦いに挑め。必ず勝つ
- 10倍あったら戦わずして勝つ
今は日本と比べれば2倍ぐらいですけどね。アメリカと比べるとアメリカは中国の5倍の兵力。とんでもないですよ。絶対勝てないですよ。そうすると勝てる方法で尖閣諸島をどのように獲るか というのを考える。これは後ほどお話いたします。
※注
ガダルカナルより大本営陸軍部作戦課長の服部卓四郎大佐が帰京し次のように第二次総攻撃の失敗について、東條英機内閣総理大臣兼陸軍大臣に報告している
・敵は完全に制空権を掌握し、熾烈巧妙な火力準備により裸の我が軍を迎え撃った
Wikipedia
・敵は地上攻撃と空中攻撃を併用し、我が軍の航空支援は皆無だった
・我が軍の大隊長級の能力薄弱
・兵の士気は麻痺しており、さらに顧慮すべき衛生は劣悪。高い発熱、下痢、栄養失調により第2師団の戦力は4分の1に低下。戦傷兵の後方担送には1人につき4から8人が必要な状況にある
・現地の火砲は十五榴12門、十加2門、野砲4門、山砲8門、高射砲12門の計48門で、弾薬不十分
・糧食は非常に不足し、揚陸物資も搬送手段無く、末端には届いていない
・軍司令官は健康。「やる」と言っているが第一線を把握していない
・敵は白昼堂々と船団輸送しているが、我が軍は潜水艦でコソコソ揚陸するも10隻で僅かに2日分の糧食を輸送できるに過ぎない(この時期に潜水艦による輸送は始まっていないため、駆逐艦の誤りと推測される)
北朝鮮が暴走し ミサイルで日本の原発を攻撃
よく言われてますけどね。
まず、北朝鮮がこれをやる時は自爆する時でしょうね。1回これやったら金王朝終わりです。
金王朝があれだけ必死になって核を作ったというのは、金王朝の体制の存続をしたかったから。ですから、核を撃ち込むということは金王朝が潰れますから。
だから、北朝鮮が暴発して日本にミサイルを撃ち込むこともなかなか難しい。
戦争をやろうとしたら戦争には目的があるんです。何かを獲ろうとする これは何も取れないでしょ?自分の金王朝が滅びるだけですから。
そして、核ミサイルで原発を撃つ。核を使ったら国際社会はまず駄目ですね。
じゃあ、核ミサイルを使わないでと言ったら北朝鮮のミサイルで原発には当たりません。狙ってみろと…絶対当たりませんから。
狙わなかったら当たるかもしれない(笑)
ゴルフでボールを打とうとして、目の前に木があって木を避けようとするから当たるんです。その時私は必ず木を狙うんです。そうすると絶対当たらない(笑)
それと一緒。その程度のこと(笑)
だから、通常弾頭だと全く意味がない…意味がないし ミサイルを日本に撃ち込むことによって、国際社会から非難を受けて経済制裁をさらに受けて北朝鮮が滅んじゃう。
ということは戦争目的に照らし合わせたら何の メリットもないのでこの「北朝鮮が暴走し原発を攻撃」する シナリオも可能性として非常に低い。
次回予告
毎日のように尖閣諸島海域周辺に武装した中国公船が侵入したり、平成29年は我が国上空を飛び越える ミサイル発射実験を行った北朝鮮。
この、2つの シナリオはあり得ると思っていたが、軍事専門家から可能性として低いと解説されたことには驚く同時に妙な納得感を得た。
さて、次回は 昨年から強烈な反日政策に舵を切った驚愕の理由が明かされる。そして、統一した朝鮮半島が対馬を乗っ取る シナリオについて解説していく。
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